強度行動障害は、自傷や他害、物を壊すなどの行動が頻発する症状です。
本人だけでなく家族や周囲の人にも大きな負担となります。
この記事では、強度行動障害の原因、支援のヒントを分かりやすく解説します。
強度行動障害について理解を深め、少しでも本人も保護者も楽になれたら幸いです。
強度行動障害とは?
自分を傷つける自傷、他人を傷つける他傷、大声を出したり、物を壊す、こだわり、異食、多動など、日常生活の中で問題となる行動が頻発する症状です。
家族だけでは精神的負担が増え、そのストレスを子供にぶつけて、問題行動を助長することもあります。
そのため、家族だけでなく学校、放課後等デイサービス、医療機関など関係する機関の連携が必要になります。
強度行動障害のある人の数は明らかではありませんが、関連施設を利用されている人の数は2021年10月時点でのべ68,906人となっています。
厚生労働省|強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会報告書
強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会報告書
強度行動障害の行動例
強度行動障害の行動には、自分を傷つける(自傷)や他人を傷つける(他害)などの行動が見られます。
「自傷」の行動例:
- 自分の頭を叩いたり、壁にぶつけたりする
- 自分の手や腕を噛んだり引っかいたりする
「他害」の行動例:
- 周囲の人を叩く・つねる・蹴る
- 大声を出す、泣き叫ぶ
- 物を投げる・壊す
強度行動障害の原因
強度行動障害の原因は、興味関心の過度なこだわり、感覚の過敏性といった障害特性に、環境があっていない事により人や場所に嫌悪感や不信感を高めてしまう事が原因です。
発達特性によるもの
発達特性とは、個々の人が生まれながらに持っている、特有の発達の進み方や性格、能力のことをいいます。以下のような特性があります。
感情をコントロールするのが難しい
不安・怒り・悲しみなどの気持ちを自分の中で整理できない
自分の意思を言葉や行動で伝えられない
「今、こうしたい」「これ嫌だ」などの気持ちを言葉で伝えられない
状況判断が出来ない
「次に何をするのか」「どうするのか」など、これから行うことが分からない
間違った学習の結果
強度行動障害と言われる行動は、
今までの環境との関わりの中で行動を学習した結果(行動の未学習・行動の誤学習)がほとんどです。
「おやつを食べる前には、手を洗う」行動について見てみましょう。
行動の未学習
幼少期や学齢期に、適切な行動を身につける力があるのにも関わらず、周囲の無理解や誤解から適切な行動を身につける行動ができないまま育ってしまうこと。
おやつを食べる前に、手を洗う事を教えられなかった
行動の誤学習
未学習のままの状態。
どうしたらいいか適切な方法が分かっていない状態。
- 自分なりにとった行動が、その場の状況や社会的に不適切なものだった。
- それでも自分の希望や気持ちが伝わってしまった。
- 自分の希望や気持ちを伝えるために、その不適切な行動が繰り返されるようになった。
友達の家で、おやつが食べたいけど、手を洗っていないのでもらえない
大きな声を出したり、自分の頭を叩いたりする
↓
おやつを貰える
↓
おやつが欲しいときに繰り返し行われる
強度行動障害になりやすい人は?
強度行動障害は、「自閉症の特徴が強い」かつ「知的障害の程度が重い」となりやすい傾向があります。
※この状態の人が全て強度行動障害に当てはまるわけではありません。

自閉症とは
自閉症(現在、自閉症のことを正式には「自閉スペクトラム症」と言います)は、対人関係のコミュニケーションが困難・強いこだわりなどの特徴を持つ発達障害です。
生まれつきの脳機能の異常によるものと考えられています。
知的障害とは
知的障害は、個人の知的能力が平均よりも低く、日常生活や社会生活への適応が困難な障害です。
通常、18歳未満の発達期に知的能力や日常生活のスキルの遅れとして現れます。
IQ(知能指数)が70未満であることが一般的な診断基準とされています。
強度行動障害が表れた場合の対応
- 落ち着くまで待つ
- 叱らない
- 好きな遊びやリラックスできる活動に誘う
強度行動障害の行動が起こった場合は、基本的に上の3つの対応になります。
無理に落ち着かせようとしても、本人もパニック状態なので、声かけやハグなどの対応も難しいでしょう。本人が、落ち着くのを待ちましょう。
ただ、自傷や他害がある場合は、別の部屋に移動させるなど被害を最小限にする必要があります。
強度行動障害の支援
本人の特性に基づいた支援を整えることで、強度行動障害を予防する支援が行えます。
キーワードは、「構造化(環境を整えること)」です。
「構造化」したのに結果が出ない場合は、今までの支援を見直し、さらに改善する「再構造化」をします。
構造化とは?
周囲の環境や関わり方をより明確に視覚化・具体化して、自閉スペクトラム症の人に分かりやすく「伝える仕組み」です。
同じ説明でも、感じ方は一人ひとり違います。
- 説明が少ないと、それぞれとらえ方が違う。
- 特性のある方はなお理解が難しい。
説明を明確に伝えるために、構造化が必要となります。
構造化したい6情報
「いつ」・「どこで」・「何を」・「どのくらい」・「どうやって」・「次は」
- 時間の視点(いつ?)
- 場所の視点(どこで?)
- 方法の視点(何を?どのくらい?、どうやって?、次は?)
- やりとりの視点(コミュニケーションツール)
これらの情報を、視覚化や具体化して分かりやすく伝えます。
視覚的な構造化
絵カードや写真を使ったスケジュール表を作り、本人が次にやることをイメージできるようにします。
例えば、おやつを食べてから帰るまでのスケジュールを、
「おやつ」→「といれ」→「かえりのしたく」→「くるまにのる」、などを絵カードで示します。
また、終わったら絵カードをしまうことで、次にやることがイメージしやすくなります。
場所の構造化
施設内などの部屋を目的に合わせた部屋にすることで、何をすればよいかが明確になります。
例えば、「この部屋は遊ぶ部屋」「隣の部屋は静かにする部屋」と分けることで、本人の混乱を防ぎます。
集団行動が難しい場合には、部屋の中をパーテーションで仕切ることも有効です。
最後にお願い。1人で対処しない
強度行動障害への対応・支援は、家族をはじめ支援している関係者にとって大きな負担となります。
本人に改善が見られないと、「こんなに頑張っているのに?」「私の力不足?」と、思い詰めてしまう方も少なくありません。
でも、悩まないで大丈夫です。
施設のスタッフ、送迎先の学校の先生、関係機関などに「あなたの悩みを話しましょう!」
多くの人が関わることで視点が広がり、新しい解決策が見つかることもあります。
支援・サポートしている人が疲れてしまうと、十分な支援を続けるのが難しくなります。
特に、日本人は「休むこと」=「サボっている」と考えて、「もっと頑張らないと!」と思ってしまいます。
あなたも、支援されています
「休むこと」や「誰かに頼ること」は、支援の一環と考えて、リフレッシュの時間を確保したり、信頼できる人に悩みを話したりすることで、自分をケアすることも忘れないでください。